2016年度 異文化経営学会研究助成

研究題目

「日本式」サービス精神の継承と伝播における課題:小売業で勤務する外国人労働者の「声」を中心に

研究の概要

本研究の目的は、エスノグラフィー調査を主な研究手法とし、日本で勤務している異文化背景を持つ外国人労働者が、如何に「日本式」サービス精神を現場で解釈し、プラクティスしているのかについて解明し、「日本式」サービス精神を再定義することによって、如何にその精神を継承・伝播していくことができるのかについて検討することである。主な研究対象は、在日外国人労働者の比率が最も高い中国人とし、調査のフィールドは、東京都及びその周辺で展開する小売店舗とする。本研究における「日本式」サービスとは、日本が重んじているおもてなし精神に基づく接客業を指す。

「日本式」サービス精神に関しては、「おもてなし」などといったキーワードを中心に、これまで様々な研究が行われてきた。しかし、その多くが顧客のニーズを追求した製造業における生産過程やホスピタリティが経営方針として重要視される観光やホテル産業といった業種に特化されており、おもてなし精神が重んじるサービスのきめ細やかさに比べ、標準化・速さなどといった要素も求められる小売業についての研究は、限られているのが現状である。申請者が行った香港における日系小売業の研究においては、現地の従業員と共に働くという参与観察を通じて、「日本式」サービスの継承・伝播が困難である理由には、①サービス・マニュアルにおける曖昧な記述に起因する日本的サービス価値観共有の困難さ;②強い「日本的」要素を強要する制度に影響された従業員の低いモチベーション、があげられることを考察した。このように、特定の「場」というコンテクストの中で、「日本式」サービス精神がどのようにプラクティスされているのかについて研究することで、現在企業の課題となっている日本的サービスのグローバル化について、示唆となる結果を提供できると考える。

また、既存研究の多くは、企業が如何に制度的管理によって顧客サービスを改善できるのか、などといった経営側の視点から述べられていることが多く、現場の第一線で働く従業員、特に外国人労働者がどのように「日本式」サービスを解釈し、それを自らのパフォーマンスに反映しているのかといった研究は限られている。本研究では、外国人労働者の「声」を最大限に反映することで、現場の重要性をより一層理解し、現場発のアイデアによる制度の改善につながることが期待されている。

本研究では、エスノグラフィー調査という研究手法を用いることで、インサイダーとして関わり、見過ごされがちな外国人労働者の「声」を拾う事が可能になると考える。本研究の結果は、「日本式」サービス精神を再定義し、如何に日本企業が日本内外において、伝統的なサービス精神を継承・伝播していくことができるのか、示唆となることが期待される。

関連の論文:

Zhu, Yi. 2016. Introducing Omotenashi to the World: Challenges of Japanese Customer Service in a Cross-cultural Setting, Transcultural Management Review. 13: 47-63.

 

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